2020年8月26日水曜日

クラブとネクタイ

昔から、まったく意味不明だな、と思っているのがネクタイの存在です。その必要性や機能性が理解できません。クールビズで、ノーネクタイが成立するなら、そもそも不要だったのではないか、と思ってします。もちろん、おしゃれという観点からすれば、個人の自由です。軍隊や何らかのチームが揃いのタイをすることも理解できます。ただ、一般的にドレス・コード化することは疑問だな、と思います。

ネクタイの歴史を紐解くと、古代ローマにたどり着きます。ローマ兵の兜は、形状からして首に当るので、こすれることを避けるため、フォカスと呼ばれるスカーフを巻いたものだそうです。時は下って、17世紀フランス。護衛のために雇われたクロアチア兵が、揃いのフォカスを巻いているのを見たルイ14世は、側近に「あれは何か?」と聞きます。側近は、クロアチア兵のことだと勘違いし「あれはクラバット(クロアチア兵)です」と答えます。おしゃれなルイ14世は、これが気に入り、自身も首に「クラバット」を巻くようになります。これが、宮廷から市民に至るまで大流行となります。

この時期の肖像画等を見ると、皆、思い思いのクラバットを首に巻いています。これがネクタイの直接的起源だと言われます。初めからネクタイは、機能も必要もない、ただの飾りだったわけです。欧州中に広まったクラバットは、19世紀初頭の英国で進化します。稀代の伊達男ボウ・ブランメルの巻いて締めて結ぶネック・クロースが火付役となります。19世紀後半には、オックスフォード大の学生が帽子のリボンを首に巻いたことから現在のネクタイが生まれます。排他的なクラブタイが始まりだったわけです。

英国伝統のクラブは、16世紀に現れ、17世紀には組織化されたようです。コーヒー・ハウスに同好の士が集い、男性のみの排他的組織になっていきました。18世紀、産業革命で市民の財力が高まると、食事や宿泊もできる建物を独自に所有するようになり、スポーツ愛好家のクラブでは、ゴルフ場、馬場まで持つようになります。排他性を高めるために高い入会金・会費、厳密な紹介制度、独自の厳しいルール等も作られます。ドレス・コードも、その一つ。各クラブ独自のタイ、いわゆるレンジメンタル(連隊)・タイの誕生です。

英国では、今でもレジメンタル・タイを締める際は、その排他性ゆえ、時と場合をわきまえる必要があるようです。排他性は、明らかに団結力を高めます。ただ、一方で、差別の温床ともなります。英国の階級社会とインドのカーストは、 どうしようもなく根深いものがあります。 先の見えない階級社会は、英国で本物のロックを生み出す主な理由でもあります。 本当にネクタイは必要ですか?
ボウ・ブランメル・スタイルのネック・クロース 出典:wikimedia.commons

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