ネクタイの歴史を紐解くと、古代ローマにたどり着きます。ローマ兵の兜は、形状からして首に当るので、こすれることを避けるため、フォカスと呼ばれるスカーフを巻いたものだそうです。時は下って、17世紀フランス。護衛のために雇われたクロアチア兵が、揃いのフォカスを巻いているのを見たルイ14世は、側近に「あれは何か?」と聞きます。側近は、クロアチア兵のことだと勘違いし「あれはクラバット(クロアチア兵)です」と答えます。おしゃれなルイ14世は、これが気に入り、自身も首に「クラバット」を巻くようになります。これが、宮廷から市民に至るまで大流行となります。

英国伝統のクラブは、16世紀に現れ、17世紀には組織化されたようです。コーヒー・ハウスに同好の士が集い、男性のみの排他的組織になっていきました。18世紀、産業革命で市民の財力が高まると、食事や宿泊もできる建物を独自に所有するようになり、スポーツ愛好家のクラブでは、ゴルフ場、馬場まで持つようになります。排他性を高めるために高い入会金・会費、厳密な紹介制度、独自の厳しいルール等も作られます。ドレス・コードも、その一つ。各クラブ独自のタイ、いわゆるレンジメンタル(連隊)・タイの誕生です。
英国では、今でもレジメンタル・タイを締める際は、その排他性ゆえ、時と場合をわきまえる必要があるようです。排他性は、明らかに団結力を高めます。ただ、一方で、差別の温床ともなります。英国の階級社会とインドのカーストは、 どうしようもなく根深いものがあります。 先の見えない階級社会は、英国で本物のロックを生み出す主な理由でもあります。 本当にネクタイは必要ですか?
ボウ・ブランメル・スタイルのネック・クロース 出典:wikimedia.commons