2020年8月28日金曜日

梁盤秘抄#5 Abraxas(天の守護神)

アルバム名:Abraxas(天の守護神)(1970)  アーティスト:サンタナ  

サンタナのベスト・アルバムは何か?と問われれば、間違いなく「スーパー・ナチュラル」(1999)と答えます。では、サンタナで一番好きな曲は?と聞かれれば、即刻「Samba Pa Ti(君に捧げるサンバ)」と答えます。この20世紀を代表する名曲は、全米ナンバー・ワンに輝いたサンタナ2枚目のアルバム「Abraxas(天の守護神)」に収められています。同アルバムからシングル・カットされたのがブラック・マジック・ウーマン。初の全米ナンバー・ワン・ヒットとなりました。

カルロス・サンタナは、1947年、メキシコのハリスコ州の生まれ。ティワナを経由して、サンフランシスコに移住し、アメリカ国籍を取ります。ブルーズに傾倒していたサンタナのデビューには面白いエピソードがあります。フィルモア・ウェストに出演予定のポール・バターフィールドが泥酔し、穴を埋めるために即席のバンドが結成されます。そこに潜り込んだのが19歳のサンタナでした。その演奏は注目を集め、バンドが結成されました。

1969年には、ファースト・アルバムがリリースされるとともに、伝説のウッドストック・ミュージック・アンド・アート・フェスティバルに出演し、大ブレイクします。翌年、リリースされたAbraxasで、全米ナンバー・ワンを獲得。トップ・バンドになります。ラテン音楽伝統のリズム・セクションに、ラテン音楽独特の哀愁を帯びたメロディ。しかし、なんといってもカルロス・サンタナの抜群のテクニックとユニークなメロディ・センスあふれるギターこそ、サンタナの魅力です。Samba Pa Ti は、美しい旋律とカルロス・サンタナのセンスが詰まった名曲です。

始めてサンタナのライブに行ったのは、76年。オリジナル・メンバーでもあるパーカッショニストのホセ・チェピート・エレアスの強烈な演奏が印象に残りました。以来、折に触れてライブには行っていますが、2013年は、やたらロング・トーンを多用したギターが疲れを感じさせ、心配しました。ただ、2017年の武道館では、完全復活。実にサンタナらしい音を聞かせてくれました。

カルロス・サンタナは、マイルス・デイビスやアリス・コルトレーン始め、実に多様なミュージシャンと共演しています。ただ、いつも確実にサンタナらしいギターを貫いています。数音聞いただけで、サンタナだと分かるくらいです。ラテン・ロックと言われますが、唯一無二のサウンドは、サンタナという独立したジャンルだと思います。
写真出典:amazon.com

マクア渓谷