「営業は強いのに、商品が悪いから売れない」とセールス・サイドが言えば、マーケティング・サイドは「商品はいいのに、営業力がないから売れない」と言うわけです。よく聞く話ですが、いずれも事の本質が分かっていない発言です。極端に言えば、どんな商品でも売るのがセールスであり、セールス不在ても売れる商品を作るのがマーケティングです。
2004年、二度目のリコール隠しに、三菱自工は社会的糾弾を受けます。その頃。三菱の車が路上で燃えると、映像付きのトップ・ニュースになっていました。車は、たまに燃えるものです。日本で一番燃えてる車は、明らかにトヨタ車。トップ・シェアだからです。そんな状況下、うちは会社の車も、家の車も三菱以外は乗らない、と言い切る中小企業の社長にお会いしました。三菱とは仕事上の関係はなく、ただ担当の営業マンを信頼しているからだ、と言っていたことが印象に残りました。
同じころ、三菱自工の営業担当役員にも会いました。「売上は3割まで落ちた。でも、いい車を作れば、必ず回復できる。最大の問題は、営業担当者が半分まで減ったことだ。これを回復するには、どれだけ時間がかかることか」と言っていました。誰が顧客をつかんでいるのか、それを明確にご存知だったわけです。
営業とは何か、その答えは、格言めいたものも含め、山ほどあるでしょう。また、 営業に携わる人は、 一人ひとり、それぞれの答えを持っているべきだとも思います。 私は、 煎じつめれば、 顧客を思いやる誠意だと思います。 ですから、 商品か営業か、 という問いは無意味。 その顧客にとって、 意味のある商品なら勧め、 意味がないなら勧めない、 ということになります。 その姿勢が、 永い信頼関係を築きます。