2020年7月15日水曜日

ハバナ・ムーン

2016年3月25日、ハバナのシウダード・デポルティーバに、50万人を超す市民が集まります。夜8時35分、キース・リチャーズのギターが、ジャンピング・ジャック・フラッシュのあのイントロをかき鳴らします。キューバにとって、実に半世紀ぶりの、そして過去最大のロック・コンサートは、ローリング・ストーンズのフリー・ライブでした。永年恋焦がれたストーンズのライブに、会場は歓喜に沸き、皆がジャンプします。ある者はキューバの新しい時代に感動し、ある者は苦しかった青春を思い、泣き出します。

ストーンズは、ロシア、中国、南米等、永らくロックが禁止されていた旧共産主義国家や軍事独裁国家でライブを敢行、自由の風を届けてきました。60年のキャリア、数々のヒット曲等とともに、ストーンズの賞賛すべき偉業だと思います。キューバでのフリー・コンサートは、その集大成のように思えます。どんなに禁止されても、各国には、必ずストーンズ・ファンがいます。若者がいれば、ストーンズがいる、と言っても過言ではありません。

ストーンズの魅力は、「「ストリートのカッコよさ」だと思います。ストーンズは、一度たりともストリートを離れたことがありません。いつも、いつまでも、街の兄ちゃんたちであり、生涯の不良です。カッコよさは、世間に媚びないこと、ノリがいいこと、皆を喜ばせようとしていること、そしてブルースがベースにあることから来ていると思います。ストーンズも、ストーンズのファンも、まったく成熟しない奴らです。でも、それをロックと呼ぶんじゃないですか。

キューバでのフリー・ライブを記録したドキュメンタリーのタイトルは「ハバナ・ムーン」。ハバナ・ムーンは、チャック・ベリーのファースト・アルバムに収録されている曲です。アメリカ娘に捨てられたキューバ男の歌。リリースは、1957年。フィデル・カストロがハバナに向けて進軍を開始する前年です。革命を成就させたカストロは、当初、アメリカとの友好関係を築こうとします。しかし、親米政権を倒されたアメリカは、カストロを拒否します。カストロはソヴィエトに頼るしかありませんでした。ハバナ・ムーンというタイトルは、とても意味深です。
出典:uDiscover

マクア渓谷