ハシディズムは、18世紀、東ヨーロッパに始まります。学究的で厭世的な神秘主義的方向へ進みすぎたユダヤ教を、より日常的な信仰生活を通じて神を見出す方向へと軌道修正しました。敬虔主義運動とも呼ばれます。17~18世紀、キリスト教でもイスラム教でも、権威主義に陥った宗教を信者に取り戻すといった復古的、原点回帰的宗教運動が起こります。まさに啓蒙主義の時代でした。ハシディズムの誕生も同じ流れのなかにあるのでしょう。

近年、ハシディズムをテーマとした映画、ドラマ、ドキュメンタリーが多いように思います。Netflixのドキュメンタリー「One of Us」(2017)もその一つ。ブルックリンのハシディズム・コミュニティから独立しようとする若者を通じて、ハシディズムの実態を描いています。敬虔な宗教生活、独自の言語、独自の教育を持つ排他的コミュニティを抜けることは容易ではありません。コミュニティ最大の目標が、いまだにホロコーストから同胞を守ることだと言います。信じがたい話ですが、それがコミュティの引き締めに使われているわけです。衰退期の組織にありがちな恐怖による支配です。「世界は驚きと奇跡に溢れている」という言葉からは、随分と離れているように思えました。
写真出典:ny daily news