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カストロにしてみれば、暗殺計画は反革命そのものであり、キューバ人同士の問題。場所が、たまたまアメリカ国内だったというだけであり、しかもCIA等が反カストロ派を支援してきた経緯があるだけに、スパイ網の展開は正当防衛ということになります。アメリカ政府にしてみれば、平等に違法行為を摘発したということになります。2014年、バラック・オバマとラウル・カストロは国交正常化に向け動き出します。いわゆるキューバの雪解けです。キューバン・ファイブは、その際、捕虜交換という形で釈放されています。
実話ものは、情報も多く、十分な準備が可能なので、結構、面白い作品が多いように思います。ただ、本作は、どうにも視点の定まらない、まったく深さのない作品になりました。情報の多さに流された印象があります。いいネタだけに誠に残念。良かった点と言えば、光の捉え方が独特で、うまく地域や時代の空気感を出していたカメラ。また、ペネロペ・クルスのやや抑え気味の演技も実話ものとしては適切だったと思います。
多少、アンラッキーだったのは、キューバの雪解け直後でなく、トランプによる揺り戻しが起こってからの公開になったことです。雪解け直後であれば、事実を淡々と追うだけでも一定の評価を得た可能性があります。揺り戻し後という環境では、より明確な政治スタンス無しには、フニャフニャの映画になってしまいます。フィデル・カストロは、キューバでコマンダンテ(司令官)と呼ば、死後も絶大な人気を誇ります。コマンダンテ・フィデルを前面に出すだけで、映画はかなり締まったと思うのですが、製作側が難色を示すでしょうね。
出典:prenza latina