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近年、中国映画の傾向として、犯罪者や脱落者を描いた作品、それも結構作家主義的な映画が増えてきたように思います。セリフも少なく、押しつけがましくなく、判断を観客にゆだねるような映画は、近年の世界的傾向でもあります。個人的には、チャイナ・ノワールと呼んでいます。いわゆる第六世代の監督たちですが、ディアオ・イーナン監督の「薄氷の殺人」あたりから、さらに新しい感性の時代に入ったようにも思います。正直なところ、よく検閲を通ったものだとも、よく好きに撮らせたな、とも思います、明らかに中国映画が変わってきたと言えます。
ビー・ガン監督は、北京でも上海でもなく、貴州省のミャオ族の街凱里の出身。一作目の「凱里ブルース」、本作ともに凱里を舞台とし、キャスト・スタッフも地元の人間を多用しているようです。中国の場合、いかに才能豊かでも、地方から、そして少数民族が這い上がることは難しいはずです。経済発展の一方で政治的弾圧を強化してきた中国ですが、政治抜きの文化については、解放が進んできたのかもしれません。あるいは、中国共産党が、政治弾圧強化を糊塗するために進める政策の一環なのかも知れません。ただ、政治的ではない映画など存在しません。意図しようが、しまいが映画は政治的存在です。当局が過敏になれば、検閲強化は免れません。