2020年6月7日日曜日

I Love NY

7~8年前、NYへ出張し、昔の仕事仲間とも会いました。私が「相変わらずNYは汚いね」と切り出すと、臭いしね、うるさいしね、人が多すぎるしね、犯罪は減らないしね、と皆が続けます。そして、いい頃合いで、誰かが「But,」と言うと、皆で「I love NY!」と叫ぶわけです。NYの定番、お決まりジョークの一つです。一時、大流行した「I Love(ハートマーク)NY」というロゴは、このお決まりが元になってると聞きました。

5番街のNY公共図書館が、「NYの消えた音~ニューヨーカーへの音によるラブレター」というアルバムを制作し、大評判になっているようです。コロナ以前の街の音を、様々な人々の協力で集め、一枚にまとめたものです。地下鉄のホーム、朝のラッシュの街、公園の静けさ等々。フレッシュでクリアーな音源は、情景どころか匂いまで思い出させます。コロナで失われた日常に涙する人も多いようです。

街には、その街独特の匂いがあると思います。例えば、ホノルルは、コナのフレイバー・コーヒーの匂い、マドリッドは、大衆たばこドゥカードスの匂い、台北は、五香粉の匂い。音も同様なのでしょうが、匂いの方が、街に暮らす人々の生活や息遣いを、ストレートに感じさせるような気がします。そしてNYの場合は、すえたドブの匂いです。老朽化し、清掃も十分ではない通りや地下鉄の臭いです。ただ、NYには、もう一つ別の匂いがあります。

世界中の人々がNYに憧れます。人々を引き付けるのは、自由の女神やブロードウェイの劇場、高層ビルのオフィスや高級マンションだけではありません。チャンスです。成功の匂いです。雑多な人種が交じり合うこともなく暮らし、犯罪も差別も無くなることはなく、様々な面で競争が激しく、お金のない人間にはとことん厳しい街です。でも、そこは、経済や文化のあらゆる面で、アメリカン・ドリームを実現できる可能性にあふれています。成功する人はごくわずか、ほとんどは失敗者です。でも、失敗者と同じ数の挑戦者が、世界中から流入し続けます。ですから、NYは、常に夢見る挑戦者の街なのです。

                                                                               ニューヨーク公共図書館前のライオン     写真出典:Daily Sun NY

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