
街には、その街独特の匂いがあると思います。例えば、ホノルルは、コナのフレイバー・コーヒーの匂い、マドリッドは、大衆たばこドゥカードスの匂い、台北は、五香粉の匂い。音も同様なのでしょうが、匂いの方が、街に暮らす人々の生活や息遣いを、ストレートに感じさせるような気がします。そしてNYの場合は、すえたドブの匂いです。老朽化し、清掃も十分ではない通りや地下鉄の臭いです。ただ、NYには、もう一つ別の匂いがあります。
世界中の人々がNYに憧れます。人々を引き付けるのは、自由の女神やブロードウェイの劇場、高層ビルのオフィスや高級マンションだけではありません。チャンスです。成功の匂いです。雑多な人種が交じり合うこともなく暮らし、犯罪も差別も無くなることはなく、様々な面で競争が激しく、お金のない人間にはとことん厳しい街です。でも、そこは、経済や文化のあらゆる面で、アメリカン・ドリームを実現できる可能性にあふれています。成功する人はごくわずか、ほとんどは失敗者です。でも、失敗者と同じ数の挑戦者が、世界中から流入し続けます。ですから、NYは、常に夢見る挑戦者の街なのです。
ニューヨーク公共図書館前のライオン 写真出典:Daily Sun NY