
林文子さんは、ホンダのトップセールスからBMW東京社長、ダイエー会長等を経て、横浜市長になりました。東京日産の社長時代の密着番組を見たことがあります。部下との会話は、ありがとうで始まり、ありがとうで終わります。ある日、階段の下の方だけ掃除した若手社員にありがとうと言います。あなたの掃除で、皆が気持ち良く働け、それがお客様に伝わり、業績が上がる、本当にありがとう。翌日、若者は、階段の上から下まで掃除していました。ありがとうという言葉で人を動かしていたと言えます。
ありがとうと言われて嫌な人はいません。自分が、ありがとうと言えば、まわりの人たちはハッピーになります。そして、世の中で起こるすべての事柄に対して、感謝の気持ちをもって臨めば、幸せにならないはずはありません。まさに魔法の言葉だと言えます。ありがとうの語源は「有り難し」だそうです。滅多にない、あり得ないという意味です。おそらく「有り難き幸せ」が省略されたのでしょう。
中国語の「謝」は、言葉を発して緊張を緩めることが語源であり、よって感謝にも陳謝にも使います。今一つ、ピンときません。英語の「Thank」やドイツ語の「Danke」は、考えるが語源で、あなたのことを思っています、といった意味でしょうか。イタリア語の「Grazie」、スペイン語の「Gracias」の語源は恩恵であり、あなたに恵みがありますように、ということ。ポルトガル語の「Obrigado」の語源は義務で、恩に着ます、という意味だと思います。日中は自分のこと、欧州は相手に対することが語源という違いがあります。
ありがとうの語源には釈迦由来説もあります。最古の経典「法句経」にある盲亀浮木の例えです。人間として生まれてくることは、広い海で、目の見えない亀が、海面に浮かぶ木片の穴から顔を出すくらい、有り難しこと、まさに僥倖。輪廻転生の考え方が背景にあります。人として生まれたことの幸せを忘れるな。つまり常に感謝の気持ちをもって生きなさい、ということでしょう。五日市さんの魔法の言葉につながりそうです。
隠れた大ベストセラー五日市剛「ツキを呼ぶ魔法の言葉」 出典:Amazon