
同じように、昔の味、という扱いになっている豆腐料理に味噌田楽があります。これも全国各地にありますが、例えば豊橋市の旧東海道沿い「きく宗」では、200年このかた、菜飯田楽一筋。大根菜のまぜご飯に味噌田楽のセットですが、あまりにも素朴な味に、多少物足りなさを感じます。ただ、この味噌田楽には、なかなか優秀な子孫が誕生します。「おでん」です。江戸期、焼いて作る味噌田楽より手軽な「煮込み田楽」が登場します。煮込んで味噌を塗って食べるわけですが、それが出汁を効かせて、豆腐以外も煮込むようになり、今のおでんになります。ちなみに「おでん」とは田楽の女房言葉だそうです。
近年、豆腐料理の人気一番は圧倒的に「麻婆豆腐」。これは、もう丸美屋のおかげにつきます。71年に発売された「麻婆豆腐の素」は、年間4千6万個を売る国民的大ヒット商品。日本に陳麻婆豆腐を紹介したのは赤坂四川飯店の陳建民。同じ麻婆豆腐とは言え、四川飯店と丸美屋ではほぼ別物。山椒のしびれ、唐辛子の辛さを極端に抑えた丸美屋のそれは、いわば和風麻婆豆腐。それがヒットの理由ですが、気になるのは、多くの中華料理店の麻婆豆腐が、丸美屋にすり寄っていることです。
オーセンティックな八杯豆腐 出典:apool-m.com