
出獄後、平等兵は進軍を開始。69年、皇居一般参賀で「ヤマザキ、天皇を撃て!」と叫びながら、ゴムパチンコで天皇を狙撃。逮捕、入獄。ヤマザキとはニューギニアで戦死した兵士を総称したと言います。グアム島では、自費で残留日本兵の救出を行います。76年、自著「宇宙人の聖書」宣伝のために、ポルノ写真に天皇家の写真をコラージュしたビラをデパート屋上からバラまき、わいせつ罪で入獄。獄中から参院選に二度出馬、二度落選。「田中角栄を殺すために記す」を出版。いつしかアナキストとして名をあげ、左翼のスターとなりました。
平等兵が、次に標的としたのは、戦場における個人の責任。「ゆきゆきて、神軍」は、その進軍に密着したドキュメンタリーです。ニューギニアで、終戦から20日後、上官が兵士を射殺した事件の真相を追い、生き残りを全国に訪ねます。皆、固く口を閉ざします。いらだった奥崎は暴力に訴えます。ついに、老人たちは、号泣しながら、事件を語り始めます。平等兵は、上官3名の殺害を決意し、手製の改造銃をもって上官宅を訪問。誤って子息を負傷させた平等兵は、お好み焼き屋から警察に電話し、自首します。
頑なに口を閉ざし生きてきた戦争経験者たちが語り始める時、必ず号泣します。彼らが、戦後過ごしてきた眠れぬ長い夜を想えば、胸が痛みます。ただ、平等兵は、そんな夜も眠ることなく、ニューギニアのジャングルに身を置き続けていたのでしょう。
写真出典:cinefil.tokyo