2020年5月30日土曜日

模合(もあい)

数年前、那覇のお気に入りの店「牛や」で飲んでいた時、コザ出身の人がいました。「コザと言えば、コンディション・グリーンだな、若いから知らないと思うけど。」と言ってみました。「知ってますよ。メンバーの一人と模合で一緒ですから。」との答え。驚きました。コザの人たちがコンディション・グリーンを忘れていなかったことではなく、沖縄で模合がまだ生きていたことに驚きました。

コンディション・グリーン
コンディション・グリーンは、70年代、オキナワン・ロック全盛期のバンド。ド派手なパフォーマンス、超絶テクのギターで、キャンプの海兵隊員たちを熱狂させました。時はヴェトナム戦争末期、出撃前の海兵隊員にとって、彼らのライブはすべてを忘れられる一瞬だったのでしょう。ちなみに、コンディション・グリーンは、米軍用語で、デフコン4「情報収集と警戒強化の段階」を表し、行動としては基地での待機を意味します。

沖縄の模合、全国的には無尽、あるいは頼母子講は、鎌倉期から続く日本の民間金融システムです。基本的には、グループ・メンバーが均一額を毎月積み立て、毎年異なる一人が総額を受け取る仕組み。例えば、10人のグループであれば、10年に一度、10年間に拠出する額と同額をまとめて受け取ることができます。明治以降は、大規模な営利目的の無尽が展開されました。悪徳業者も多かったことから、規制法や免許制も導入されました。これは、あくまでも業者規制であり、個人間の無尽は今も規制がありません。

以降、規模はさらに拡大し、銀行業務に近いことを行う無尽もでてきました。1951年の法改正で、銀行業務も可能な相互銀行として生まれ変わります。無尽は、積立定期預金に近いとも言えますから、銀行化も理解できます。それだけに金融システムが普及すれば無用となります。92年には相互銀行法も廃止、第二地銀として普通銀行化しました。800年の歴史は、そのニーズの高さの表れであり、世界中で、同様の民間金融が存在します。

銀行や郵貯が普及、定着した現代、無尽の必要性はほぼありません。沖縄でいまだ模合が盛んな理由は、農村の互助の仕組み「ゆいまーる」に基づく県民の助け合い精神の現れだ、と言われます。違うと思います。模合は、信頼の確認や集金目的で、定期的に寄り合いがもたれます。沖縄の県民性からして、毎月の寄り合い、つまり飲み会こそ、模合が続いている唯一の理由だと思います。
                                                                                                                                                     写真出典:milestone-t.com

マクア渓谷