2020年5月31日日曜日

BBQ

東京で、本当のバーベキューを食べることはできません。強いて言えば、トニー・ローマのリブくらいでしょうか。という話をすると、東京にはBBQを売りにしている店も多いし、BBQのできる公園なんか結構あるよ、と言われます。それは、バックヤードBBQであり、グリルなので、派生的な、なんちゃってBBQです。本当のBBQは、バーベキュー・ピットという専用の釜を使い、ピット・マスターたちが、半日か一日かけてローストするする米国南部の名物料理です。

バーベキューは、スペイン語のバルバコアが英語化したもので、カリブ海でコロンブスが発見した原住民の料理法だと言われます。カリブを西インド諸島、米国原住民をインディアン、唐辛子をペッパーと呼ぶのと同じ、よくある西洋史観です。肉のローストなんて、世界中にあります。例えば、ハワイのカルア・ピッグは、バナナの葉で包んで蒸し焼きにするミクロネシア料理です。メキシコのバルバコアでは、リュウゼツランの葉で包みます。

米国南部は、北部とは異なる文化を持ちます。そもそもカリブ海文化圏であることに加え、スペイン、フランスといったカソリック系によって、プランテーションと黒人奴隷が持ち込まれました。北部のピューリタン文化とは真逆、南米の文化に近いものがあります。戦争になるのも頷けます。南北戦争(Civil War)の敗戦国であり、石油を除けば、いまだに貧しい農業国です。

食文化も、基本的には貧しい素材を使いますが、スパイスなどで多様に調理します。例えば、ケイジャン料理の炊込御飯「ジャンバラヤ」、煮込み料理の「ガンボ」など、食材は手近なものを放り込む感じです。BBQも、もともとは牛の頭や肩バラなど、食べるには堅いものから始まっています。実は、貧乏人のとても貧しい食事なわけです。その手の料理は、世界中にあって、何故か、どれも美味いのです。食材が良ければ、そのまま食べます。食材が貧しければ、美味しくするために大いに工夫を重ねるわけです。

ルイジアナのケイジャンの人たちは、いまだにフランス語と原住民の言葉が混じったケイジャン語を話し、アコーディオンとフィドルのケイジャン音楽を演奏し、ケイジャン料理を食べます。最も有名になったケイジャン食は、タバスコに代表されるペッパー・ソースです。
                                                                                                                                簡易型BBQピット  出典:locanto

マクア渓谷