要は、自宅で料理して食べる習慣が薄れ、安価に満足感とカロリーが得られるファスト・フードへの依存が高まっているわけです。支出金額ベースで見ると、米国の外食率は、1960年頃から伸び始め、2015年には、ついに5割を超えました。外食コストが高めの日本でも35%程度。屋台文化のある東南アジアも外食が多いのですが、夕食は8割以上が自宅でとります。米国で、自宅食が減ったのは、核家族化と離婚率の高さゆえでしょう。米国には、もはや家庭の味は存在しないとも言えそうです。もちろん、外食で何を食べるかも問題です。米国では、ひたすら油と砂糖を食べているわけです。安価な外食の選択肢が少なく、かつ不健康なものが多いのは、歴史の浅い移民国家ゆえ、食文化が薄いということなのでしょう。
かつて、米国庶民の外食を支えたのは、ダイナーでした。ダイナーは、19世紀、工場周辺のランチ・ワゴンから始まります。20世紀に入ると、移動式から固定式ワゴンへ、ワゴンを模した建屋へと変化します。メニューは限定的で、労働者の胃袋を安く、すぐに満たせるグリル系が中心です。例えば24時間提供される朝食メニューの典型は、卵料理(卵3個)、ベーコン、フレンチ・フライ、トースト、コーヒーのセット。ウェイトレスが勧めるチェリー・パイか、国民食アイスクリームをつけて、カロリーは軽く1000キロ超え。カロリーでは、ファスト・フードに負けませんが、安価さ、気軽さで押されました。ここ数年、米国のファッション界では、「プラスサイズ・モデル」が一般化しつつあります。多様性を否定するつもりはありませんが、「太っていて何が悪い」的な展開は問題だと思います。世界的にも肥満は進んでいます。その一因は、米国式ファスト・フードの世界展開だと思われます。プラスサイズ・モデルが世界標準になることは好ましくないと思います。
典型的ダイナー 出典:eater LA