2020年5月23日土曜日

営業昔話(8)目標は高く?

昔々、「目標は高かるべし」と言ったもんだとさ。

1968年メキシコ・オリンピックの走り幅跳びで、驚異的な世界新記録が出ます。あまり注目されていなかった米国のボブ・ビーモン選手が、それまでの世界記録を一気に55cmも上回る8m90cmを出し、金メダルに輝きます。いかに高地での記録とは言え、数センチを争う競技で、この記録は驚異的でした。

ボブ・ビーモン   出典:blackkudos
ビーモン選手には、変わったルーティンがありました。今日の目標とするあたりに帽子を置くのです。その日も、同じように、このあたりかな、というところに帽子を置き、スタート地点へ向かいます。ところが、砂場を整備する人が、その帽子をトンボでひっかけ、随分先まで動かしてしまいます。それと知らないビーモン選手は、いつも通り、帽子を目指してジャンプします。結果は、驚異的な世界新記録。人間は自ら限界を決める唯一の動物、と言われます。偶然とは言え、ビーモン選手は、自ら決めた限界を否定し、潜在能力を引き出したとも言えます。

もし、ビーモン選手が、最初から9m のところに帽子を置いたとしても、同じ結果が出たでしょうか。恐らく、力んで、失敗ジャンプを繰り返したのではないかと思われます。オリンピックという一発勝負の世界で最も大事なことは、日頃のトレーニングだと思います。ビーモン選手がさほど注目されていなかったということは、それまで記録に恵まれていなかったということでしょう。帽子が邪魔をしていた面もあるかもしれません。ただ、最も注目すべきことは、ビーモン選手が、日頃から、いい練習を積み重ね、潜在能力を高めてきた、ということだと思います。

「目標は高かるべし」はいい言葉だと思います。その高さが、人間を成長させると思います。しかし、むやみに高いだけの目標は、人をつぶしかねません。営業は、短距離ではなく、長距離ランナーです。高いモチベーションを持続させる「夢」こそ大きく持つべきだと思います。そして、その実現に向けた日々の「目標」は、あくまでも実行可能な計画に裏打ちされたものであるべきでしょう。その積み重ねこそが重要であり、その積み重ねこそが大きな記録を生み出します。




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