2020年5月13日水曜日

世界一のデイリー・ストア

山崎製パンが展開するコンビニ「デイリーヤマザキ」は、乳製品がメインでもないのに、なぜデイリーなのかと不思議でした。実は、Daily、毎日ヤマザキだったことに、ようやく気づきました。私は、てっきり乳製品の方のDairyだと思っていたわけです。と言うのも、毎日という意味では「デーリー」と表記することが多いからです。

ところで世界一のデイリー・ストア(乳製品店)と呼ばれている店がコネチカット州ノーウォークにあります。「ステュー・レナード」です。納屋を模した木造の巨大な建屋には、新鮮な乳製品、野菜、肉類、魚介、パン、お菓子、総菜など、常時3万アイテムを超えるという商品が所狭しと並びます。店内には、ガラス張りの牛乳工場、製パン所もあり、通路のそこここに機械仕掛けの動物が鳴き、店外には小動物園まであります。デイリー・ストアのディズニー・ランドとも呼ばれます。

ステュー・レナードは、1920年、地元の牛乳販売店からスタート。その後、直営農場も持つなど成長を続けます。牛乳配達車に、モーと鳴くプラスティックの牛をつけ、子供たちから大人気だったようです。非凡さを感じさせます。60年代後半、農場と店がハイウェイの建設用地となり、かつ牛乳配達業の先行きを不安に思っていたレナード家は、乳製品主体の食品スーパーを開業します。思い描いたのは、子供たちが店内の牛乳工場を見ている間に、母親が買い物をするという店でした。

ユニークな発想からスタートした店は、20年もたたずに単位面積当たりの売り上げ全米ナンバー・ワン、世界一のデイリー・ストアと呼ばれるまでになります。その成長を支えたと言われるのが有名な「私たちのポリシー」でした。店の入り口に重さ3トンという巨石があり、そこにポリシーが刻まれています。「ルール1.お客さまは常に正しい。ルール2.もしお客さまが間違っている場合には、ルール1を読み返せ!」

私が思うステュー・レナード最大の発明は、店内の曲がりくねった一本の道だと思います。通常のスーパーは、並列した棚に商品が並びます。効率的です。ただ、顧客は、買いたいものだけを探します。ステューでは、一本のクネクネ道に沿って、かつストーリー性のある陳列に沿って、商品の全てを見ることになります。レジにたどり着く頃には、カートは満杯。大型スーパーが失った商品提案力を、上手に実現しているわけです。まさにショッピングのテーマパーク化と言えます。
写真出典:RTI Research

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