では、何を聞いてもらうのがいいかと言えば、やはりジェームス・ブラウンということになります。"Cold Sweat", "I got the feelin'", "Sex machine"あたり。長浜のラーメン屋に近づいた時と同じくらい匂います。ところが、食べ始めると、匂いなんか気にならないわけです。ファンクは豚骨ラーメンです。そもそも黒人俗語のFunkは悪臭のこと。JBは、その音楽、あのステージ、そして存在そのものが、強烈に臭いわけです。それは、えらく原始的な匂いで、まるで人間が初めて音楽に出会った時の匂いだとも言えそうです。
60年代にJBが口火を切ったファンクは、70年前後で、大きな広がりを見せ、全盛期を迎えます。その頂点に立ったのは、天才スライ・ストーン率いるスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンでした。黒人・白人の混成バンドでしたが、おりしも高まりを見せていたブラック・パワー・ムーブメントと重なり、コンサートは常に暴動レベルの盛り上がり。騒乱の扇動容疑でFBIにつきまとわれるほどでした。その扇動ぶりは、ウッドストックの記録映画で見ることができます。猛スピードでファンクを追求していったスライは、73年、アルバム「Fresh」で頂点を極めます。余計なものをそぎ落とした、まるで墨絵のようなファンクでした。

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