音楽や絵画は、煎じ詰めれば、好きか嫌いか、それにつきると思います。私が好きな画家は、ラファエロ、ベラスケス、マティスの三人。他に、好きな絵となれば山ほど、気になる画家も大勢います。その中の一人に、琉球の名渡山愛順がいます。
出典:Mikuniうちなぁ
名渡山愛順は、1906年、那覇の琉球かすりの問屋に生まれます。東京美術学校(現芸大)では、黒田清輝の弟子和田英作に師事。明治洋画壇の主流派と言えます。卒業後は、那覇を拠点に活動。琉球の伝統を踏まえた作画だけではなく、琉球文化の保全活動にも尽力した沖縄画壇の重鎮です。
愛順の筆には、油の質量を感じさせる安定感があるものの、構図には、多くの場合、ごく微妙な不安定感があります。点数の多い婦人像には、なまめかしい、独特なリアルさがありますが、その表情には、あきらめにも似た無関心さのようなものがいつも漂っています。どこか琉球の歴史と現状を体現しているように見えてしまいます。
昨年10月の首里城炎上には驚きました。首里城は、ただの観光名所ではありません。沖縄が、かつて琉球王国という独立国家であったことの象徴です。首里城は再建されなければなりません。再建に際しては、明治政府がつけた沖縄という名称、県という枠組を捨て、例えば「うちなぁ特別行政区」として、より独立性の高い存在をめざすべきではないか、とも思います。加えて言えば、早々に名渡山愛順美術館も開設すべきかと思います。