2020年4月18日土曜日

ジャンテ・ロウ

国連の世界幸福度報告で、いつも上位を占めるのが北欧諸国。幸福度報告は、GDP、寿命、福祉等の外形的データの積み重ねです。では、当人達はどう思っているのか、と幸福度の意識調査をすれば、やはり北欧諸国が上位を占めます。私は、北欧の陰鬱な犯罪TVドラマのファンです。その陰鬱さは筋金入り。とても幸せな人たちが作るドラマとは思えません。白夜・極夜に極寒、収入の半分が税金、鬱病やアル中の多さ、などからして、北欧の人たちが幸せですと言っているのが、まったく理解できません。

高福祉国家という道を選択し、収入の半分が税金という国々では、教育、医療、老後生活等が無料です。外形的データが良いのは当たり前。北欧型社会主義は、SF的な管理社会を思わせます。そんなに優れた制度だとすれば、北欧以外にも広がっていたはずです。私が知っている北欧の人は、皆穏やかな人たちですが、覇気を感じません。例えば、映画界でも、北欧は超美人の供給国ですが、名を成したのはイングリット・バーグマンとリブ・ウルマンくらい。情熱も、やる気も、生きる喜びも、あまり感じないのは、高福祉政策の悪影響ではないか、と思ってしまします。

でも、当人たちは幸せだと言うわけです。気になって、調べてみたら、面白いものを見つけました。「ジャンテ・ロウ」です。1933年にデンマークで出版された小説で唱えられ、瞬く間に、スカンディナビア諸国に浸透した道徳訓です。10項目で構成されますが、言っていることは「自分が特別だと思うな、他より優れていると思うな」ということにつきます。厳しく謙虚さを求めているわけです。ジャンテ・ロウが、短期間で、北欧中に浸透したのは、そもそも、そういう精神風土があったからなのでしょう。


恐らく、キリスト教ルター派という信仰がベースだと思います。同じプロテスタントでも、商工業者が多いカルヴィン派は、産業革命を先導し、冨を築きます。対して、ルター派は北方農民の宗教であり、より原理主義的だと言えます。北欧の人々は、厳しい自然や、厳しい農作業に、黙々と耐えてきた人々なのです。滅多なことでは、文句も言わないのです。それを幸せと呼ぶかどうかは、意見が分かれるでしょうが、そうしなければ生きてこれなかったのでしょう。

イングリット・バーグマン   出典:allcinema

マクア渓谷