2026年5月22日金曜日

病院食

フランスの病院食
急性腎不全で入院したことがあります。幸いなことに、無罪放免、つまり何の食事制限もないまま退院することができました。ただ、5日間の入院で体重が10kg落ちました。体の水分を抜くという治療の影響もありますが、実は病院食が不味すぎて食が細くなったためでもあります。昔から、病院食は、不味いものと相場が決まっています。コストが抑えられていることもありますが、最大の理由は塩分の制限だと思います。高血圧や腎臓病患者向けの病院食の塩分は、1日6gまでという制限があります。小さじすり切り1杯分に相当します。一方、日本人の平均摂取量は10gとのこと。病院食が味気ないものになって当然です。

腎不全の原因が前立腺肥大にあったことから、慈恵医大病院で前立腺の一部切除手術を受けました。5日間入院する必要があったので、今度は準備よく、塩、出汁、ふりかけなどを密かに持ち込みました。ところが、意外にも、病院食が美味しかったので、まったく出番がありませんでした。慈恵医大だけ、病院食のコストや塩分量の基準を無視しているとも思えません。出汁や食材の工夫が上手なのかも知れないとも思いました。しかし、ほどなく、味噌汁やスープが一切出てこないことに気付きました。味噌汁やスープの塩分を他のメニューに回すことで味のある食事を実現していたわけです。味噌汁の塩分は、1.5gといいますから、3食で4.5g。これは大きな違いを生みます。なお、食事中の水分としては、ほうじ茶が出されていました。

娘がパリで入院したので看病しました。その際、フランスの病院食に驚かされました。とても美味しいのです。娘の食が細かったこともあり、食べ残しを味見していました。器こそプラスティックの使い捨て容器でしたが、例えばコルドン・ブルーといった手の込んだまともな料理が出されていました。毎回、メニューも付いてきました。パンは国のお墨付きであるラベル・ロージュ認定品が出され、毎回、フランス家庭料理の定番である塩ポタージュや少量ながらブランド・チーズも付きます。デザートには果物も出ますが、ヨーグルト状のものが多かったと思います。とても塩分が制限されているとは思えませんでした。脳神経外科の回復病棟ゆえのメニューだとは思いますが、さすが美食の国、美味しいものを食べて元気になるという発想なのでしょう。

日本では、患者が何をどれほど食べたかを看護師がチェックしています。パリでは、それも一切ありませんでした。日本の病院食は、治療の一部として病院が管理し、ゆえに保険でカバーされているのでしょう。フランスの病院食は、病院ではなくフード・サービス会社が提供しています。もちろん、メニューは医師と連携して決めているとは思いますが、かなりゆるいように思います。また、一般的に、病院食は保険でカバーされていないようです。さらに、日本では入院患者への食べ物の差し入れは制限されることが多く、禁止される場合もあります。フランスには、一切、そういう制限はありませんでした。ちなみに、生花は持ち込み禁止でした。感染症対策ですが、日本の病院でも広がりつつあるようです。花屋さんは大打撃でしょうね。

ちなみに、日本に限らず、病院内は禁煙です。フランスも同じです。ただ、欧米の禁煙ルールは屋内に限られることが多く、屋外なら自由というスタイルです。パリの病院で最も驚いたことの一つは、病棟の玄関あたりにも灰皿が設置されていたことです。また、ゴミ箱にも、だいたい簡便な灰皿機能が付いています。玄関前の灰皿付近では、結構な数のスタッフや患者がタバコを吸っていました。禁煙ファシズム下にある東京よりも、かなり気軽にタバコを楽しめます。昨年、パリでは、法律の改定が行われ、公園、学校周辺、スポーツ施設周辺など、子供や住民が集まる屋外エリアは禁煙とされ、ポイ捨ても含めて、罰金が設定されたようです。そこに病院が入っていないのも、結構、驚きです。(写真出典:tabizine.jp)

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