監督: ジェームズ・キャメロン 2022年アメリカ
☆☆☆
世界の歴代興業成績ベスト3の映画は、アバター、アベンジャーズ/エンドゲーム、タイタニックだとされます。これにインフレ調整を行ったデータでは、風と共に去りぬ、アバター、タイタニックという順番になります。完璧なデータを取ることが難しい面はあるものの、アバター、タイタニックが歴史的大ヒット作品であることは間違いなく、この2作品を手がけたしたジェームズ・キャメロンは、最も商業的な成功をおさめた映画監督と断言できます。アバターは、2009年に公開されました。歴史的、世界的大ヒットとなり、続編が期待されました。ただ、モーション・ピクチャー技術を使った映画製作は、高額で、時間もかかり、かつ技術的進化も間断なく続き、さらにコロナ禍も加わり、ここまで時間がかかったのでしょう。アバターは、決してストーリーがウケたわけではないと思います。ファンタジー特有の世界観も、さほど奥の深いものではありません。ストーリーの単純さはキャメロン映画の特徴でもあります。それがヒットに貢献している面もあるのでしょうが、今回もストーリーだけ見れば、少年少女向け映画といった風情です。ただ、モーション・ピクチャーが持つ威力は、依然、大きなものがあります。異形のナヴィ族が、人間と同じ表情や仕草を見せるところが、アニメやCGにはないモーション・ピクチャー最大の魅力だと言えます。もっとも、モーション・ピクチャーで蓄積されたデータをAIがディープ・ラーニングすれば、いつかCGの方が勝っていくことになります。俳優という職業も過去の物になるかもしれません。
「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」のサブ・テーマは、反捕鯨であり、反日だと言えます。一瞬ではありますが、銛打ちボートに「日捕」という漢字のロゴが写ります。この映画が企画されている段階では、反捕鯨運動はブームの最中でした。キャメロン監督も反捕鯨運動家です。反捕鯨運動が下火となった現在、反日要素はこの程度ですが、企画段階では、徹底的な反日映画になっていたのではないでしょうか。過激なグリーン・ピースやシー・シェパードはじめ反捕鯨運動には、理解しがたい異常さがあります。捕鯨は、環境保護、資源保護といった観点から、国際捕鯨委員会等によってコントロールされてきました。反捕鯨運動は、環境要因に加え、鯨が知的動物であることを運動の根拠にしています。
実に妙な話です。知的レベルで対応を分けるというのは、差別主義者である欧米人に特徴的な発想と言えます。仏教における殺生の戒めに差別の概念はありません。もっとも日本における殺生禁止令は、実にいい加減なものであり、偉そうなことは言えませんが。他にも、ノルウェー、アイスランド等の捕鯨国はありますが、とりわけ日本だけが目の敵にされるのも、差別主義ゆえと考えられます。キリスト教国ではない日本は、潜在的に邪教国という認識があるともされます。また、反捕鯨運動では、各国の少数民族が行う生存のための捕鯨は認められ、商業捕鯨のみが反対の対象とされています。厳密に言えば、その違いも曖昧だと言えます。動物愛護の観点からしても、反捕鯨は突出した異常さを持ちます。
動物愛護家たちは、食用に飼育された動物は、対象外だと言いのけます。これまた意味不明な話です。話は「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」に戻りますが、海のナヴィであるメトカイナ族の食事シーンは出てきません。動物愛護上、都合の悪いシーンは排除されるのでしょう。ちなみに、映画のなかで、スカイ・ピープルと呼ばれる人間は、鯨に擬されるトゥルクンを殺し、脳の油だけを採って、死体は棄てます。これは、鯨を乱獲し、資源を枯渇させた欧米人がやっていたことです。日本人は、余すところなく、命の恵みをいただいていました。「日鯨」と映像に入れるくらいなら、死体を棄てるなどしないで欲しいと思います。アバター・シリーズは、あと3作用意されているようです。「猿の惑星」以来の反日映画という点も含め、もう見なくてもいいかな、と思いました。(写真出典:filmarks.com)