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シャーマン将軍 |
いわゆる総力戦の時代の到来です。総力戦は、アメリカ南北戦争に始まると言われます。産業革命によって、殺傷能力を飛躍的に高めた最新武器が多く投入されます。円錐形のミニエー弾、ライフリングと呼ばれる銃砲身内の螺旋状の溝、さらには機関銃も登場します。海や川では、スクリューを備えた汽走戦艦、あるいは潜水艦も誕生します。職人が工房で作っていた武器は、工場で大量に生産されるようになり、人馬に頼ってきた武器の補給は、鉄道や蒸気船が使われることになりました。当然、武器工場や鉄道も攻略目標となり、戦場は兵団が対峙する平野から後方の都市部へと拡大します。南北戦争では、こうした変化を踏まえた新たな戦略論も登場することになりました。
北軍の西部総司令官だったウィリアム・シャーマン将軍による総力戦という考え方が、近代戦争の幕を開いたとされます。ことにアトランタからサバナまで破壊し尽くしたシャーマン将軍の「海への進軍(March to the sea)」は、総力戦の始まりを告げた戦いとも言われます。その距離400km、幅は50~100km、兵器工場や補給拠点のみならず全ての産業基盤、鉄道、住宅を焼き尽くします。これが南軍の物心両面に渡る戦闘能力を削いだと言われます。一層本格的な総力戦が戦われることになったのが、第一次世界大戦でした。戦車、飛行機、化学兵器等の革新的な兵器に加え、要塞、塹壕といった防御態勢の強化が持久戦を生み、兵員、兵器、弾薬が大量に消費されます。
各国は、持てる力の全てを注ぎ、総力戦を遂行し、結果、900万人の戦闘員、700万人の非戦闘員が犠牲になりました。しかし、第一大戦が生んだ最大の悲劇は、第二次世界大戦だと言えます。進化した航空戦力が戦域を拡大し、2,500万人の戦闘員、3,000数百万人の非戦闘員が犠牲となりました。総力戦の行き着く先は明確です。人類の滅亡です。その頂点に位置するのが核兵器であり、広島・長崎への原爆投下は、まさに総力戦の象徴です。また、総力戦ゆえ、交戦国が受ける社会的、経済的ダメージも増大し、敗戦国が負う賠償金も膨大な額になります。これが戦争を長引かせ、いずれかが決定的ダメージを受けるまで継続されるようになります。つまり、総力戦は戦争の終わり方まで変えたわけです。
いずれが攻撃を仕掛けたかは問わず、全ての交戦国の最高責任者は、国際司法裁判所で、戦争犯罪被疑者としての審査を受けるというルールを設定してはどうか、と思います。戦勝国による軍事裁判は、あまりにも一方的に過ぎます。勝てば官軍という常識を変える必要があります。また、国連も存在意義なしとまでは言いませんが、機能不全に陥っている面もあります。この方式を採れば、各国の最高責任者は、戦端を開く前に、その妥当性を証明するための準備を、相当しっかり行う必要が生じ、未然に戦争を防ぐ一助になるではないでしょうか。何が何でも総力戦は避けるべきです。悲惨な終わり方しかあり得ないのであれば、未然に防ぐ手立ては、いくらあってもいいと思います。(写真出典:ja.wikipedia.org)