ゼッポレ |
ドーナツに類した揚げ菓子は、世界中に存在するようです。どこでも、お祭りの際に食べる、いわゆるフェスティバル・フードだったようです。油も砂糖も貴重なものだったでしょうから、理解できる話です。食べたことのあるドーナツ類のなかで、私が一番好きなのはゼッポレです。イタリア系の人に聞いた簡単な作り方は、スーパーで売っているピザの生地を揚げ、粉砂糖をかけるというものです。これで十分に楽しめます。日本でも一般的なアメリカ式ドーナツは、母親が揚げたドーナツで馴染んでいたにも関わらず、あまり好みではありません。アメリカ人は、ドーナツが大好きです。日本のお握りに相当するような気がします。NYでは、朝食にドーナツを食べる人が大半を占めます。朝のミーティングでは、会議室にドーナツとコーヒーが置いてあるのが定番でした。ただ、私は、一度も手を出したことはありません。
ドーナツの起源は、オランダのオリボーレンだと言われますが、揚げ菓子自体は、古くから世界中にあったと思われます。オリボーレンは、ピューリタンが持ち込んだアメリカ式ドーナツの起源ということなのだと思います。オリボーレンは、丸く揚げて、上にクルミを乗せていたことから、ドー(生地)ナッツ(木の実)となったようです。アメリカ式ドーナツを特徴づけるは、なんと言ってもリング状のドーナツです。公式的には、19世紀半ば、船乗りのハンソン・グレゴリーという人が、火の通りを良くするために穴をあけたとされています。アメリカで、ドーナツが普及したのは、第一次大戦の際だったとされます。慈善団体などが、兵士への慰問の一環としてドーナツを無料配布したことがきっかけだったそうです。その後、ドーナツ・ショップが全米でフランチャイズ展開し、種類も様々増えて、アメリカのドーナツ文化ができあがります。
ドーナツと言えば、アメリカの警察官の大好物というイメージがあります。映画やTVのなかで、警察署には、いつもドーナツが置いてあり、勤務中にも街で頬張り、差し入れの定番もドーナツといった具合です。そのせいか、アメリカの警察官は、太った人が多いように思います。映画のなかの警察署のドーナツと言えば、クリスピー・クリームのドーナツが多いように思います。ただ、警察官とドーナツというイメージを作ったのは、世界最大のドーナツ・チェーンであるダンキン・ドーナツでした。店に立ち寄った警察官には無料でドーナツを提供するというキャンペーンを行ったことから、イメージが定着したのだそうです。なかなかうまい手です。警察官が、よく来る店となれば、セキュリティ上は極めて安心。ドーナツで警備会社を雇ったようなものです。
世界のドーナツ類と言えば、ゼッポレの他にも、フランスのベニエ、ドイツのクラップフェン、スペイン発祥のチュロス、ポルトガル発祥ながらハワイで有名なマラサダ等々が、よく知られています。お菓子好きのアラブにも揚げ菓子は多数あります。そして、沖縄のサーダーアンダギーも、忘れてはいけません。起源ははっきりしませんが、中国の開口笑というお菓子が琉球に伝わったものだとされます。縁起ものとされ、祝いの席にも出されるようです。日持ちすることから、沖縄土産の定番でもあります。ただ、やはり揚げ物系は、揚げたてが一番美味しいに決まっています。恩納村へ行った際などには、三矢本舗のサーダーアンダギーは避けて通れません。(写真出典:tiraccontounaricetta.it)