2021年6月23日水曜日

地震雲

高校の美術の授業で、屋外で水彩画を描くという課題が、何回か連続でありました。私は、初回、青い空と白い雲だけを、ササっと描きあげ、以降、友人とおしゃべりしたり、ちょっかいをかけたり、プラプラと幸せな時間を過ごしました。教師に怒られるだろうと思っていましたが、結果、良く描けていると、作品をベタホメされました。以降、美術の授業は、まじめに受講しました。 私は、結構な雲好きだと思っています。雲を見ていて飽きることがありません。観光地等で写真を撮ると、かなり高い確率で、ほとんどが雲、という写真が入っています。二度ばかり、地震雲と思われる雲を撮ったことがあります。地震雲であることには自信がありましたが、その後に、人体が感じるような地震は、一切ありませんでした。

地震の前兆・予兆という話は、実に興味深いと思います。地盤隆起やP波といった科学的なものもありますが、科学的に解明されていない民間伝承も数多くあります。典型的には、動物や昆虫の異常行動があります。東日本大震災の時には、茨城県にイルカが大量に打ち上げられていました。深海魚が海面に上がる、サクラエビが不漁になる、犬が吠える、猫が逃げる、鼠がいなくなる等々、数かぎりなくあります。また、井戸が枯れる、湧き水が濁るといった現象や、地鳴りや謎の発光等は東日本大震災でも報告されています。後付け、こじつけ、たまたま、といった面もあるのでしょうが、昔から言い伝えられてきたものも多くあります。科学とは、因果関係が証明され、再現性が確認されたものだけを指します。科学的ではないという理由で、すべての民間伝承を否定することはできないと思います。

地震雲は、大きな地震の後に、必ずと言っていいほど話題になります。携帯電話やスマホが普及したからこそ、記録されるようになったわけです。私が、地震雲を知ったのは、2004年に発生した中越地震の時でした。新潟では、結構、話題になっていました。それ以来、空を見る時には、気を付けて見ています。地中で、例えば断層に大きな圧力がかかると、電磁波や磁場が形成され、それによってイオン化された気体分子が地震雲を発生させるという説が、よく知られています。科学的な説明に思えますが、地中深くで発生した電磁波が、土中や大気中を通過できるのか、他の電磁波を発生するメカニズムが必ずしも雲を発生させていない等の反論もあり、地震雲は、科学的に否定されています。そもそも、これが地震雲という基準も明確ではありません。ネットで地震雲の画像を検索すると、かなり多様な雲がアップされています。要は、変わった雲を見ると、地震雲じゃないか、と思ってしまうわけです。

長く伸びた筋状の雲が何本か平行して現れ、他の雲が風に流されるなか、まったく動かない状態が長く続くと、地震雲とされることが多いようです。私が、見たものも同じです。これは何かあるに違いない、と思わせます。雲ではありませんが、地震と電離層異常の関係は、科学的に研究されています。電離層は、大気の上層部にある分子や原子が、紫外線等により電離した層であり、電波を反射する性質を持ちます。この性質を利用したのが、かつて国際通信の主役だった短波通信です。現在、国際通信は、より確実な衛星通信や海底ケーブルを使って行われています。なんらかの理由で、地震の1週間ほど前に、電離層が低くなる現状が確認されています。電離層の高度は電波によって観測可能です。東日本大震災の5日ほど前にも、太平洋上における電離層の異常が観測されていたようです。

まだ、因果関係は解明されていないものの、研究は継続され、あるいは地震予知への利用も検討されているようです。と聞けば、素人的には、地震雲もあり得るのではないか、と思ってしまいます。私が最も怖いと思った映画は「エクソシスト」(1973)ですが、作中「青カビに疑問を持ったから、ペニシリンが生まれた」という名セリフがありました。似非科学との批判を受けようとも、謎の解明に努力してもらいたいものだと思います。(写真出典:news.yahoo.co.jp)

マクア渓谷