2021年1月11日月曜日

象の天敵

 象の天敵はネズミという話があります。ネズミは、象の足裏をかじる、鼻に入って窒息させるとか言われますが、科学的にはデタラメ。象の天敵と言えるのは病原菌だけであり、天敵とは言わないにしても、密猟者や自然破壊者としての人間も脅威なのでしょう。無敵とも言える象ですが、臆病な性格で、知らないものには近づかないことで身を守っているそうです。中国共産党は、時々、象をイメージさせるような行動をとることがあります。国内では無敵、海外でも無敵に近づきつつある中国共産党ですが、例えネズミであっても、潜在的な脅威と見なしたものには容赦ない対応を取ることがあります。それが無敵状態を作り上げてきた秘けつでもあるのでしょう。

2020年10月、アリババ・グループの総帥ジャック・マーは、公の場で政府批判を繰り広げました。中国共産党のスターとして賞賛されてきたジャック・マーですが、ここ数年、反トラスト法を盾に、政府から圧力をかけられていました。報道されていない部分で、相当のプレッシャーを受けていたことは想像に難くありません。当局批判は、蓄積されたいらだちの爆発かもしれません。それ以降、ジャック・マーの姿は、まったく確認されていません。富裕層が、しばらくの間、世間から姿を消すことは、ままあります。しかし、ジャック・マーは公人であり、それは難しいと思います。アリババ・グループは、党にとって、大きくなり過ぎたということかも知れません。

中南海を囲む法輪功学習者
思い起こすのは「法輪功事件」です。法輪功は、1990年代に、李洪志が起こした気功の流派です。真・善・忍を日常生活の指針とし、4つの動作と瞑想で構成されます。組織もなく、会費もなく、自然発生的に中国全土に広がり、愛好者は、アッと言う間に国内で7千万人、世界で1億人に達したと言われます。党に匹敵する規模になった法輪功を恐れた江沢民の指示で、政府は圧力をかけ始めます。99年、拘束された実践者の釈放を求める1万人が、読書をしながら、無言で、党の中枢とも言える中南海を囲みます。「中南海、包囲される」と新聞が書き立てたこともあり、江沢民は激怒し、徹底的弾圧が開始されました。

全国で、いわれなき弾圧、拘束が行われます。そして、拘束者の臓器を摘出して移植に使うという蛮行が明るみに出ます。政府は否定したものの、様々な形で、その事実が確認され、世界中から厳しい批判が行われました。一人っ子政策の際、地方幹部が、施設送りとなった二人目以降の子供たちを海外へ里子に出し、手数料を稼いだことがありました。恐らく、臓器摘出も、政府、あるいは党による指示ではなく、黙認のもと、地方幹部が行ったものではないでしょうか。法輪功に対する弾圧は続いています。中国政府の日本大使館のホームページにも「邪教『法輪功』の危害」というページがあります。

中国古典芸能を世界に紹介する「神韻芸術団」は、NYに本拠地を置き、世界中で公演しています。神韻の公演が決まった国は、必ず中国政府から公演中止を強く要請されます。神韻は、亡命した法輪功学習者たちが立ち上げた芸術団です。古典芸能を弾圧する中国政府に抗議するというスタンスを取り、暗に法輪功弾圧に対抗しています。一度、東京で公演を見ましたが、高いレベルのテクニックを持ち、古典芸能をモダンに表現していました。(写真出典:epochtimes.jp)

マクア渓谷