古代文明と認められるものは、文字を持った文明です。文字は、当然、必要性があって生まれるわけですが、それは農耕の始まり、集団作業、余剰の発生、社会的分業の始まり等が背景にあったと考えられます。文字を必要としない高度な文明の存在も知られていますが、文字無しでは限界があるように思われます。文字は、象形文字からスタートします。それを使い勝手良く簡素化したものが、表意文字や表語文字であり、さらに思いっきり簡易にしたものが表音文字です。
表音文字の起源はフェニキア文字と言われますが、それ以前に原シナイ文字と原カナン文字がありました。いずれもエジプトのヒエログリフをベースに、紀元前2000年頃に作られています。見た目はヒエログリフの簡略版ですが、大事なことは、20数文字の組み合わせで、すべての言葉に対応できる汎用性です。一文字一意味の表意文字は、限りなく多くの文字が必要となり、それを使いこなせる人は限られます。表音文字の誕生は、文字の大衆化だったわけです。

例えばベトナムや韓国でも事情は同じです。ただ、この二カ国は、独自の表音文字を正式な文字にしていきます。いまだに両国とも、名前を始め、多くの言葉が漢字で表記可能であり、ベトナムでは7割が漢字化できると言います。では、何故、日本だけが、漢字と仮名の併用を続けているのでしょうか?いくつかの要因が考えられますが、おそらく最も大きな理由は、江戸期の識字率の高さ、ことに漢字の普及率の高さだったのではないでしょうか。戦後、GHQが日本語のアルファベット化を検討したものの、識字率の高さに断念したという話も伝わります。
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