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ガーンジー島は、英国海峡チャネル諸島で二番目に大きな島です。ちなみに一番大きな島は、牛や伸縮性のある織物で有名なジャージー島です。ノルマンディーの西の沖合に位置し、英国王室属領として英国法の及ばない自治領となっています。かと言って、独立国ではないので、英国連邦国でもなく、欧州連合国でもありません。平たく言えばやはり英国の一部です。日本人には、なかなか分かりにくい話です。主な産業は、観光、園芸、酪農であり、タックス・ヘイブンとしても知られます。チャネル諸島は、第二次大戦中、ナチスに占領された唯一の英国領でもあります。
ナチス占領下で生まれた悲恋が、ミステリー仕立てで語られます。興味をそそられたロンドンの女流作家は、島で謎解きをするうちに、英国人として最も大切にすべきものに目覚め、米国人の金持ちとの婚約を解消するに至ります。原題を直訳すれば「ガーンジー島の文学とポテト・ピール・パイ協会」となります。実に英国的。文学、園芸、厳しい自然、ジン、何よりも友人たちの絆と、道具立ても、実に英国的。英国の観客たちの笑みや涙が容易に想像できます。「英国的なもの」が主役の映画と言ってもいいのでしょう。
実に素直な脚本、実に手堅い演出、実に味のあるキャスティング、そして園芸や自然に対する愛情があふれる映像。この映画の制作に携わった人々は、本当に楽しかっただろうな、と思えます。角度をつけた映画や賞を狙う映画などとは一線を画す佳作。この作品のような、ほんわかとした、分かりやすい映画作りも大切にしていただきたものだと思います。
写真出典:dokushokai-movie.com