74年、地方の大学には、まだ全共闘時代の空気が残っていました。寮には、個性的な先輩も多く、なかでも大学生活8年目という先輩2人がおり、様々なことを教わりました。ある日、そのうちの一人が、俺のアジトへ連れていってやる、といってヒッピーのたまり場のような飲み屋へ連れていかれました。二人で話をしていると、周りのヒッピーたちも参加してきて、小さな店は文学論議で大いに盛り上がりました。気が付けば、真夜中を過ぎ、雨も降り始めていました。

「八月の濡れた砂」は、1971年の藤田敏八監督作品。ロマンポルノ移行前の日活最後の映画です。同名の主題歌は、後に井上陽水と結婚した石川セリが歌いました。まず、歌があり、それにインスパイアされた藤田敏八が、わずか25日で撮りあげた映画です。映画と主題歌の関係が、他の映画に比べて一層濃いわけです。71年の公開終了後から若者の間で評判が広がり、1年後、特別に再公開されたという伝説の映画でもあります。私も二年続けて見に行きました。
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