シュハスコは、ホジージオと呼ばれる食べ放題スタイルを取ります。各テーブルには、表裏が緑と赤のカードが置かれています。緑は、肉を持ってこいというサイン、赤は食事の終りを意味します。焼かれた肉類は、鉄串のまま、各テーブルを巡り、欲しいという客に欲しいだけ切り分けられます。牛肉、豚肉、鶏肉、ソーセージにエビ、なぜかパイナップルも焼かれています。牛肉の一番人気はクッピンです。セビューとも呼ばれるコブウシのコブの部分です。希少部位ということになりますが、ほどよくサシの入った柔らかい肉です。私は、日本でいうイチボにあたるピッカーニャの方が、うま味を感じられて好きです。
シュハスコの店には、サラダ・バーが付きものです。野菜類だけでなく、ブラジル料理も並んでいます。私のお気に入りは、ブラジルのソウル・フード、フェジョアーダです。肉類と豆を塩味で煮込んだ料理です。アフリカから連れてこられた奴隷たちが、主人たちが捨てた臓物類を煮込んで食べたことが起源とされます。同じような由来を持つ料理は世界中にあります。日本の煮込み、ケイジャンのガンボー、ローマのトリッパ、フィレンツェのランプレドット、韓国の各種スープ類等々ですが、臭みを取り、柔らかくするために、じっくり煮込むので、うま味たっぷりに仕上がり、いずれも間違いなく美味しくなります。
シュハスコとともに飲むべきは、ピンガです。カシャッサとも呼ばれますが、サトウキビを原料とする蒸留酒です。そういう意味ではラム酒と同じなのですが、風味は明らかに違います。古来からブラジルにあったものではなく、サトウキビも蒸留技術もポルトガル人が持ち込んだもののようです。アルコール度数は、38~54度と聞きます。ストレートでもいいのですが、バチーダと総称されるカクテルもよく知られています。なかでもカイピリーニャ は有名です。ライムと砂糖とクラッシュアイスにピンガを混ぜたものです。口当たりが良く、さっぱりとした風味がシュハスコに良く合います。
シュハスコは、アサードと呼ばれることもありますが、実は似て非なるものです。アルゼンチンやパラグアイ等スペイン語圏では、熾火でじっくり燻すように肉を焼きます。これがアサードです。当然のことながら、アサードは、焼き上がりまで時間がかかることになります。アルゼンチンと言えば、パンパ、ガウチョということになります。パンパは、ラ・プラタ川流域の広大な平原ですが、アルゼンチンだけではなく、対岸のウルグアイからブラジル南部まで広がっています。シュハスコも、アサードも、パンパのガウチョ、ポルトガル語ではガウーショですが、彼らが発祥とされます。にも関わらず、なぜ焼き方の違いが生まれたのか、興味深いところです。(写真出典:gnavi.co.jp)