2022年6月24日金曜日

サルサ・ソース

メキシコ料理は、何を食べてもサルサ・ソースの味がするように思え、やや飽きてしまいます。もちろん、実際には、様々な味があるのですが、イメージとしては、やはりサルサ・ワールドです。ところが、妙な中毒性があり、たまに、無性に食べたくなります。近所に、テックス・メックス料理の店もありますが、発作が起きた時には、手っ取り早くサルサ・ソース、もちろん辛いホット・タイプを買ってきて、中毒症状を緩和させます。サルサとは、スペイン語でソースのことです。代表的なサルサ・ロハ(赤いサルサ)は、トマト、ハラペーニョ、にんにくで作られます。また、サルサ・ヴェルデ(緑のサルサ)は、トマトに替えてほおずきの一種トマティーヨを使います。

メキシコは、大きな国ですから、地方によって、味付けも料理も異なり、名物料理も様々あるようです。また、古い歴史のなかで、祭礼や儀礼に結びついた料理が多い点も特徴と言われます。こうした点から、メキシコ料理は、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。とは言っても、メキシコの味の基本は、トマト、タマネギ、にんにく、ハラペーニョであり、サルサにはすべて入っています。あとは、もうヴァリエーションの世界です。日本で言えば、昆布と鰹節の出汁に相当しそうです。従って、サルサ系ソースを使えば、なんでもメキシコ料理風になるとも言えます。アボガドを入れるとワカモーレになり、ライムを搾り入れると魚料理のセビチェになり、肉類とともにトルティーヤに挟めばタコスになるわけです。

トルティーヤは、トウモロコシや小麦を粉にして、練って薄く焼いたパンの一種であり、メキシコ料理を代表する食品です。メキシコでは、大昔から、とうもろこしをアルカリ水に通すことでグルテンを得ていたようです。そのままパンとしても食べますが、様々な具材を挟めばタコス、ラップすればブリトーになります。タコスと言えば、パルパリの皮を思い描く人も多いと思いますが、あれはアメリカ発祥のテックス・メックス(テキサス風メキシコ料理)です。同じように、ナチョスもテックス・メックスであり、本格的なメキシコ料理店にはありません。他にもトルティーヤ料理は多くあり、具材を巻いてトマト・ソースをかけたエンチラーダ、マサ(生地)でチーズを包んで焼くケサディーヤ等が代表的です。

メキシコと言えば、テキーラも欠かせません。竜舌蘭から作られる蒸留酒は、メスカルと呼ばれ、特定の竜舌蘭を使った高級品がテキーラです。古代から飲まれていたブルケとスペインの蒸留技術が出会って誕生したがメスカルだと言われます。カクテル・ベースとして有名です。コアントローやライム・ジュースで作るマルガリータが最も有名ですが、これはLA発祥です。また、オレンジ・ジュース、ザクロ・シロップで作るのがテキーラ・サンライズです。このカクテルを有名にしたのは、ミック・ジャガーとイーグルスだとされます。しかし、うまいテキーラを楽しむなら、ストレートに限ります。ライムを口に搾り、一気に飲んで、塩をなめます。ただし、高いアルコール度数は要注意です。テキーラ2杯で、皆、メキシコ人になれます。

千駄谷小学校近くの「フォンダ・デ・ラ・マドゥルガーダ」は、大好きなメキシコ料理店です。地下1階と2階に広がる世界は、メキシコそのものです。料理は、東京では珍しいほど本格的なメキシコ料理です。マリアッチのギター・トリオがメキシコ感をさらに醸します。テキーラの品揃えもなかなかです。マリアッチのおじさんたちに”シェリト・リンド”をリクエストして、テキーラをあおれば、気分はすっかりアミーゴです。メキシコは”重ねていく”文化の国だと思います。絵画や壁画の色、マリアッチの音、料理の食材と色、そういえばアステカ文明の遺跡も装飾で埋め尽くされています。日本のシンプルさを良しとする方向感とは真逆なようにも思います。(写真出典:livejapan.com)